私たちはどのようにして相手の印象を形作るのか?【印象形成編1・中心特性と周辺特性】

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人の印象はどのように決まるのだろうか?

はじめて会った人の印象を一般的に「第一印象」と呼んだりするが、第一印象がよければ、それだけで、その後の関係性もスムーズに築きやすくなる。逆にいえば、第一印象が悪ければ、それだけで関係性が発展する可能性は狭まってしまう。

そうした印象は、服装、髪型、容姿といった見た目もあれば、話し方、立ち振る舞いなどの身体的な情報も影響を与える。また、話している内容、例えば仕事や趣味といった情報からも相手の印象は形作られていくだろう。

このような限られた情報から相手のパーソナリティ(特性)を推論することを「印象形成」と呼ぶ。

では、この印象の決め手となる要素は何があるのだろうか?「人は見た目が9割」を耳にしたことはあると思うが、見た目は確かに重要だ。しかし、見た目が悪かったとしても、相手が上場企業の代表だったとしたら、どのように見えるだろうか?

例えばFacebook(現Meta)の創業者であるマークザッカーバーグはシンプルなTシャツやパーカーを着ることで有名だ。まるで大学生のような見た目だが、肩書きを聞けば、それだけで印象は一変するだろう。

このような、印象形成に関わる研究は心理学でも行われており、とりわけ、Asch(1946)の「中心特性」と呼ばれる研究が有名だ。

中心特性と周辺特性

Aschは印象形成に与える影響が大きい特性語と、小さい特性語があることを指摘した。特性語とは、パーソナリティを表す単語のことで、「知的な」「勤勉な」「注意深い」などである。
影響力が大きい特性語に「温かい/冷たい」を上げており、このような特性を『中心特性』と呼んだ。一方で、影響力が小さいその他の特性語を『周辺特性』と呼んでいる。

実験をしてみる

さて、こうした理論をもとに実際に実験を行った。
「ある人物の紹介」と題して、以下のリストを参加者に振り分けて提示し、提示された内容に従って人物像をイメージしてもらう。その上で特性評価を記入し、比較を実施する。
簡単なので、よければこれを読んでいるあなたも想像してみてください。

リストA
知的な、器用な、勤勉な、温かい、決断力のある、実際的な、注意深い

リストB
知的な、器用な、勤勉な、冷たい、決断力のある、実際的な、注意深い

どうでしょう?
どちらがどのような人物像だと思ったでしょうか?

私たちが行った実験では、Aschの先行研究通り、リストA(温かい群)の方がポジティブな評価があり、リストB(冷たい群)の方がネガティブな評価になった。実際にやってみるとわかるが、確かに「温かい/冷たい」の単語で印象がガラッと変わる感じがする。

所見

おもしろいところは、この結果が英語圏と日本語圏どちらでも通じるところである。言語も文化も異なる地域で同じような結果がでているのだ。
これは私見になるが、一つは身体感覚に近い特性語が中心特性になりうる可能性があるのではないかと思う。温かい・冷たいといった単語は人の温度感を表す用語であり、特性語リストの中でも身体感覚を伴ったキーワードだといえる。このような国を超えて誰もが認識しやすく、わかりやすい身体感覚を伴った特性語は文化圏を超えて中心特性になりやすいのかもしれない。周辺特性に関しては想像になるが、おそらく国ごとの文化により、重要視される概念が異なるため、国による違いがあるのではないかと想像した。

少なくとも、「温かい/冷たい」は人の印象形成に大きな影響を与える要素となるため、よりポジティブな印象を持たれたい方は、温かみを意識した見た目、態度、姿勢を意識すると効果がありそうだ。


合わせて読みたい

Asch(1946)の「パーソナリティの印象形成」追試研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsre/29/2-3/29_21-017/_pdf

付記情報

今回の学びの場:放送大学対面授業「心理学実験2」
このシリーズは、コーチングや心理学の学びを広め、多くの方に役立つことを願って書いています。なるべく正確な情報を書くようにしていますが、内容を保証するものではない点は予めご了承ください。

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